Vol.01

一台のバスに、技術と美意識を。Luviaを生んだものづくりの舞台裏

  • 季節のツアー

旅の時間そのものを目的にする。ラグジュアリーバス「Luvia」誕生秘話
なぜ「遊山」は生まれ、なぜ「Luvia」は走りはじめたのか


目次






動き出した、誰も見たことのない「動く特等席」

このバスの名は「Luvia(ルヴィア)」。名鉄グループが世に送り出す、最高峰のラグジュアリーバスです。厳選された本物の素材、職人の手仕事による内装、そして走行中も乱れることのない静けさ——単なる豪華な移動手段ではなく、複数のプロフェッショナルたちの技術と美意識が結晶した、いわば”走る美術作品”です。

このLuviaが走る旅には、「遊山(ゆさん)」という名前がつけられています。

遊山が目指すのは、目的地だけでなく、そこへ向かう時間そのものを愉しむ旅です。
その思想を形にするためには、従来の観光バスの延長ではない、新しい移動空間が必要でした。そうして誕生したのが、名鉄グループ最高峰の特別車両「Luvia」です。

しかし、理想を一台の走る車両として実現するまでには、乗り越えるべき数々の技術的な課題がありました。
本物の素材を使いながら重量を抑え、安全性を確保し、走行中も上質な静けさを保つ。その一台を形にするため、異なる分野のプロフェッショナルたちが力を合わせました。

 

名鉄グループバスホールディングスが挑む「動く特等席」をつくるという挑戦


プロジェクトを統括したのは、かつて名鉄バスで数々の車両製造に携わってきたベテラン技術者でした。
「私個人の集大成として、どこにもない車両を作ろうと挑みました」と振り返ります。

担当したのは、株式会社スペース、三菱ふそうバス製造、そして各サプライヤーを束ねる統括業務、とりわけ工程管理でした。最も難しかったのは、「『これは出来ない』と言わせないこと、そして気持ちよく業務にあたっていただくこと」だったといいます。同時に、自社スタッフに対して「なぜ出来ないのか」を丁寧に説明する必要もありました。この課題に対し、「設計を一方的に任せるのではなく、一緒にアイデアを出し、出来ることを考える。コミュニケーションを取ることを常に意識しました」と語ります。

目指したのは、上質さと厳しい安全基準の両立。「デザイナーが描いた美しさを、いかに製造メーカーと共に具現化するか。一方的に要求するのではなく、一緒にアイデアを出し合い、ひとつの『美術作品』を作り上げました」

安全性については、「お客様の安全性と車両認可を通すために、各サプライヤー様に法的認証のクリアを指示しました」と明かします。上質さと安全基準の両立は、Luviaのすべてのパートに通底する条件でした。

ご乗車された際には、天井部の幻想的な造形美と照明、そして木の温かみを感じさせる座席肘掛けのアール(曲面)にご注目ください。
外装を彩るラッピングデザインも、見どころのひとつ。その詳細については、次章でご紹介します。

完成したLuviaを目にしたときの感想を、こう語ってくれました。「デザイン通りに表現できました。このプロジェクトメンバーで創り上げた、ひとつの美術作品です。今回のLuviaには100%満足しています。ですが、もし次回2号車を創るのであれば、120%の完成度を目指したい」。

 

理想を「走る車両」に変える


名鉄グループバスホールディングスが描いた「理想の上質な空間」。
それを、厳しい安全基準をクリアしながら確かな「形」へと具現化したのは、ものづくりのプロフェッショナルたちでした。

「骨格」に、あらかじめ神経を通す三菱ふそうバス製造の段取り

名鉄グループバスホールディングスが描いた「理想の上質な空間」を、車両として物理的に成立させる——その責任を担ったのが、三菱ふそうバス製造です。製作指示書の作成と全体設計の取りまとめという、プロジェクトの中核を担いました。

同社がまず口にしたのは、各社のこだわりと車両重量の管理を両立させる難しさでした。
上質な内装、本物の素材、豊富な装備——理想を追えば追うほど、車両は重くなります。「どこまで載せられるか、常に全体を見ながらの調整でした」。同社は車体構造と使用材料を一つひとつ見直し、贅沢な仕上がりと重量抑制という難題に応えていきました。

造り方にも独自の工夫がありました。Luviaはまず骨格(スケルトン)として組み上げ、その段階で複雑な電気配線をあらかじめ内部に組み込んでいます。後の工程で美しい内装を隙間なく仕上げるために、見えなくなる「神経」を先に通しておく——完成後の上質さから逆算した緻密な段取りでした。

各社の理想を「乗る」土台として成立させる——それが三菱ふそうバス製造の仕事でした。

「本物」を、走る車内へ株式会社スペースのデザイン

走る場所や見る角度で表情を変え、片側に「海」、もう片側に「山」の左右非対称の外装デザイン。
これを手がけたのが株式会社スペースです。「遊山の旅が届ける“移りゆく景色”そのものを、車体に写し取りたかった」——同社はそう語ります。抽象的な「思想」を、目に見える「意匠」へと落とし込む。それがスペースの役割でした。

内装で徹底したのは、本物の素材を使うことでした。木や金属を装飾としてではなく実際の素材として用い、車内に落ち着いた質感と重厚感を生み出しています。しかしバスは「走る空間」。本物の素材は重く、そのままでは車両に負担がかかります。そこで目に触れない部分は徹底的に軽量化し、見える部分の質感は損なわないという絶妙なバランスを追求しました。

さらにこだわったのが「アソビ(すき間)」をなくすことです。部材同士にわずかな余裕があると、走行中の振動で擦れ合い、異音の原因になります。「上質な静けさを保つために、接合の一つひとつを突き詰めました」。手が触れるエッジはすべて丸く面取りし、美しさと安心感を細部まで両立させています。

デザインは、絵として美しいだけでなく、乗る人の五感に届いて初めて完成する——スペースの仕事は、その両方を同時に成立させることでした。

 

座り心地に技術を宿す天龍工業の座席とコンソールボックス

デザインや素材がどれほど美しくても、乗る人の体に最も長く、そして直接触れ続けるのは座席です。この座席とコンソールボックスの設計・製造を担ったのがシート造りの専門家である天龍工業でした。

背もたれと座面には、走行中の振動を優しく和らげる「ダブルクッション構造」を採用。座面内部には通気性とクッション性に優れた「ブレスエア」を用い、長時間の乗車でも身体に負担をかけない極上の座り心地を実現しています。両脇をゆったりと預けられるダブルアームレストも完備し、座面にはシートナンバーを美しい焼き付け加工で刻印。目に見えにくい細部にまで至る、旅の満足感を高める上質さが息づいています。

もうひとつの担当領域であるコンソールボックスでは、木目を基調としたデザインにこだわり、美しい質感と使いやすさを両立させるため、設計を極限まで練り上げました。最大の難関はまさにこの設計プロセスにあったといいます。名鉄グループバスホールディングスやデザイナー(スペース)、協力会社と、幾度も協議を重ねて試行錯誤の末にこの理想の形を導きだしました。(※天龍工業は座席・コンソールボックスの設計・製造を担当し、車内への取り付け・“艤装”は、後述するビューテックバスサービスが担っています。)

完成したLuviaを目にした、天龍工業の担当者は、胸を張って語ります。「完成度が非常に高く、デザインの意図通りに仕上がりました。着座感も極めて良好で、心から安心しています。私自身も一度は乗車してみたいバスですね」。

 

理想の空間を実車に仕立てるカリモク家具が守り抜く美学

乗る人が直接手を触れる、木の家具。カリモク家具は、前方サービステーブル(笠木付き)、サービスボックス天板、後方サービスカウンター、カウンター前収納、窓台を担当しました。

使用したのは地元・岐阜県産木材。シミや節、色目にまで配慮し、一枚一枚を選び抜いています。
とりわけ神経を注いだのが、湿度による反りや狂いを防ぐための厳密な含水率管理でした。
加えて、走行中の振動にも耐えられるよう、接合部には一般家具以上の補強を施しました。手に触れたときの木の質感を損なうことなく、安全に長く使える強度を確保しています。

木材は機械による精密加工で正確に形づくり、最後は職人の手仕上げで整え、仕上げには木そのものの質感を活かす透明塗装を選びました。
「軽さよりも、強度と本物の質感を優先しました」——確かな技術への自負が、その言葉に滲みます。

 

重い天井装飾との、寸分の狂いも許さぬ闘いビューテックバスサービスの手仕事


図面の上でどれほど美しく描かれていても、それを寸分の狂いなく現実の車体に落とし込む工程がなければ、Luviaは完成しません。内装の艤装、シートの取り付け、電気配線を担い、設計された骨格に命を吹き込んで「乗れる空間」へと仕上げたのがビューテックバスサービスです。

最大の難所は、重量のある天井装飾の取り付けでした。頭上に大きく重い装飾を、寸分の狂いなく、そして安全に固定しなければなりません。
この工程では、三菱ふそうバス製造、スペースとの緊密な連携が不可欠でした。「三社で情報を共有し、取り付け位置と固定方法を何度もすり合わせました」。と語るように、密なコミュニケーションでこの難題を乗り越えました。

特にこだわったのは、左右対称(シンメトリー)と均一な仕上がりです。上質な空間であればあるほど、わずかな左右のズレが目立ってしまうためです。乗る人が無意識に感じる「整った心地よさ」は、この地道な精度への追求から生まれています。

 

五感を刺激する、共創の車内空間


ハードウェア(車両)だけでなく、車内で過ごす時間そのものを豊かにするために、インテリアやアートにも至高のこだわりが注ぎ込まれました。

織物がつくる、贅沢な肌ざわりと色彩住江織物(SUMINOE)の技

 Luviaに乗車されたら、まず窓辺と足元に注目してください。上下開閉のロールカーテンが車窓いっぱいに景色を広げ、途切れることなく続くリピート柄のタイルカーペットが、立った瞬間から心地よい踏み心地を伝えてきます。この二つを含む、シート生地・カーテン・床材・壁装材を手がけたのが住江織物です。

床には、バスでの採用実績が少ないタイルカーペットを提案。建築デザイナーが求める色と、パイル(毛足)で表現できる色との差を丁寧に説明しながら試作を重ね、インクジェットプリント技術を用いて、美しい連続柄を表現しました。施工は、新幹線グリーン車の内装を手がける専門業者が担当しています。窓辺のロールカーテンも、自社製生地に堅仕上げ加工を施し、従来の横引きではなく上下に開閉する構造を新たに採用し、車窓からの視界を最大限に広げました。「メカ部分を含む取り付けと構造の作り込みには苦労しました」と語る通り、幾度も試作を重ねた道のりを振り返ります。

 

材料の手配から構造まで一から検討する、前例のない試みで「正直、どこまでご協力できるかという不安もありました」。そう振り返りつつも、明確なコンセプトに触れ、これから生まれる車両への楽しみを感じながら臨みました。

 

車内に季節を掲げる岩﨑知子氏のアート

移動空間に季節と余韻を加えたアーティスト。
Luviaの車両後方には、もう一つの「窓」が存在します。画家 岩﨑知子氏による大型の絵画作品です。

テーマは、抽象的に描かれた季節。窓の外を流れる実際の景色と呼応するように、車内にも季節の情景が広がります。走る車窓の風景と、アートが描く季節——二つの景色が響き合い、「遊山」の旅をより深く豊かなものへと誘います。

作品はカバーをかけずに展示され、絵肌そのものの質感や息遣いをダイレクトに感じることができます。さらにこの作品は季節ごとに掛け替えられる予定となっており、訪れるたびに新しいアートとの出会いが待っています。

 

 

そして、あなただけの特別な旅へ

完成したLuviaを前に、車内を彩った住江織物担当者はこう語りました。
「従来のバスとは違う高級感、オリジナル感を感じました。このバスで、ゆったりとした旅行をしたいと思いました。」一台のバスに、これほど多くの情熱と手が重ねられました。

しかし、このバスはまだ「完成」していません。
あなたが乗り込み、車窓の景色を眺め、自分自身や大切な人と心を通わせたとき——「遊山」という本当の旅が、完成を迎えます。

ただの移動時間ではない、心に深く刻まれるかけがえのないストーリーを、ぜひ「Luvia」でお楽しみください。

※後ほど設置
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